第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
自室に戻り、茫然と座り込む私に晴明さんは謝罪する。
「ごめんね、。
を泣かせるつもりじゃ無かったけど
ちゃんと本当の事を知って欲しかったんだ。」
「…………うん。」
「慶喜はきっと断れない。
彼はどんな時も自分より周りの人達を優先するから。
今更、弱体化にも程が有る幕府を背負ってくれなんて
人身御供と同じなのにさ………
慶喜は引き受けるよ………きっと。」
「うん。
………………分かってる。」
「そっか……は知ってるよね。」
暫くの時間、私も晴明さんも無言のまま重い空気だけが流れる。
どうせ私はあと1ヶ月でこの時代から居なくなるのに、どうしてこんなに悲しいの?
ううん……違う。
この時代に残るって……
慶喜さんと共に生きて行くんだって決めたから………
悲しいんだ。
「やっぱりは、慶喜が好きなんだね?」
晴明さんからのダイレクトな問いにも、私はもう誤魔化しもせず素直に頷いてた。
「さっき慶喜が言われてたみたいに
も一緒に江戸に行くってのも有りだと思うけど……」
「私を大奥に?」
流れる涙もそのままに私が嘲るように微笑むと、晴明さんは大きな溜め息を吐く。
「そうだね………
慶喜がにそんな事をさせる訳ないか。」
そう。
慶喜さんは一人で何もかも背負って生きて行くつもりなんだろう。
昨夜の涙はその決心を固める為のものだったんだ。
その過程で、少しだけ私に心の葛藤をぶつけただけ。
きっともう今の慶喜さんは、何事にも揺らがない。
だからこそ私の想いは八方塞がりで、どこにも進めないんだって打ちのめされているんだ。
進めないなら退けばいい。
元通り……自分が生きていた時代へ帰ればいい。
でもそれを決めるのは、慶喜さんの傍に居ようって決心した時より苦しいのは何故?
晴明さんに背中を擦られながら声を殺して泣き続けていると……
「………
起きているかい?」
部屋の外から慶喜さんの柔らかい声が聞こえた。