第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
「慶喜様は、あのとかいう女に御執心なのですか?」
……………私?
「そうではない。
只、彼女を帝からお預かりしている以上
放ってはおけないと……」
「慶喜様が江戸城に入れば、朝廷は敵と同じですぞ!
もう帝に義理立てする必要などありません!」
「それでもを残して行くのは……」
「成れば、それ程あの女に固執するのでしたら
一緒に江戸へ連れて行けば宜しいのでは?」
「江戸に?」
「ええ。
江戸城に大奥という都合の良い物が在るのは御存知でしょう?
其処にあの女を放り込めば良い。
慶喜様が何時でも好きな時に、
好きな様に可愛がれば宜しいのです。」
「を大奥へ………」
「将軍の寵愛を受けるとなれば、大奥内でも立場は上になるでしょう。
あの得体の知れない女には充分過ぎる待遇だ。
まさか……
あの女を正室に等と馬鹿な事を考えてはおりますまいな?」
もう嫌だ。
慶喜さんの答えを聞きたくない。
涙をポロポロと溢しながら首を横に振ると
「………出よう。」
小声でそう囁いた晴明さんは私の身体を支えたまま、小部屋から連れ出してくれた。