第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
…………夢…じゃないよね?
翌朝布団に入ったまま、ぼーっとした頭で考えてみる。
まだキスの感触が残る唇に指を這わせてみれば、顔が熱くなるのを感じた。
やっぱり私は慶喜さんが好き。
多分、慶喜さんも………
少なくとも私は嫌われてはいないはずだから……
そうなら、もう気持ちは揺るがない。
私は元の時代には戻らず、ずっとここに居る。
この先もずっと、慶喜さんの隣で生きて行きたい。
長い間モヤモヤと悩み続けていた事に結論が出ると、予想以上に気分が晴れ晴れとした。
今直ぐ慶喜さんに会いたいよ。
この気持ちを伝えたい。
そう思ったらじっとなんてしていられなくて、私は慌てて身支度を整えると部屋を飛び出した。
だけど……どうしたらいいのかな?
こんなに朝早く慶喜さんの部屋へ訪ねて行くのもかなり失礼だよね。
考え倦ねて歩調を緩めた私の背後から
「。」
いきなり晴明さんが肩を叩く。
「わっ……ビックリしたぁ。
晴明さん、どうしたんですか?」
急に呼び止められた事だけじゃなく、朝に弱くていつも寝坊助の晴明さんが起きている事にも驚きなんだけど。
だけど晴明さんは何故か真剣な目をして
「……ちょっと来て。」
と、私の手を引き歩き出す。
「此処、入って。」
晴明さんに連れて来られたのは、大広間の隣にある小部屋。
「静かにね。
声を出さないで。」
神妙な面持ちの晴明さんに釣られて、私も真面目な顔で小さく頷いてから二人でこっそりと部屋へ入った。