第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
長い長いキス。
「んっ……ふ…」
私が息苦しさに身を捩れば僅かに唇は離れるものの、また直ぐに塞がれてしまう。
慶喜さんは左腕で確りと私の腰を抱え込み、大きな右手で後頭部を掴んで固定した。
『自分を抑え切れない』って、こういう事だったんだ。
どんな時でも優しい慶喜さんからは想像も出来ない激しいキスに、涙が滲んで腰から崩れ落ちてしまいそう。
でも………全然嫌じゃない。
慶喜さんが望むならもっと……もっと先だって………
キスだけで朦朧としてしまった意識を何とか繋ぎ止めていると、慶喜さんは突然に私を横抱きにした。
「これ以上、に触れていたら……
私は可笑しくなって仕舞いそうだ。」
そしてそのまま自室に運ばれ、そっと布団に寝かされる。
ついさっきまではあれ程眠れなかったのに、今は一瞬で堕ちてしまいそう。
嫌だ、眠りたくない。
慶喜さんがどうして泣いていたのか、その辛さを私に伝えて欲しいのに。
「慶喜…さ……」
薄れる意識の中でその名前を呼んでみても、慶喜さんは柔らかく微笑むだけで……
「お休み、。
……良い夢を。」
それだけを言って私の額にそっと口付けると、そのまま部屋を出て行ってしまった。