第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
「ねえ、。」
「ん?」
「ちゃんと分かってる?」
「え……何を?」
「が元の時代に帰るまで、あと1ヶ月だって事。」
「……っ!
分かってるよ。」
居候してる慶喜さんのお屋敷。
その中にある私の部屋で晴明さんと二人、のんびりとお茶してる最中に突然言われた言葉。
『分かってる』なんて答えたけれど、本当は忘れてた。
ううん……忘れてたというより、考えるのを避けてた。
元の時代に戻るとなれば、当然慶喜さんともお別れする事になる。
今の私の心は、その事実を受け容れられない程に慶喜さんに縛られているんだ。
勿論この気持ちは誰にも伝えていない。
私一人で抱え込んでるつもりだけど………
どうやら晴明さんにはお見通しみたいだ。
「はそれで良いの?」
「良いって?」
晴明さんはその問いには答えず、じっと私の目を見つめた。
『言葉にして良いの?』って問われてるみたいな視線に、私は逃げるようにして顔を背ける。
「うん……良いよ。
私はちゃんと元の時代に帰る。
それが自然の流れだもんね。
私がずっとこの時代に……
『ここ』に居ちゃいけないんだよ。」
それでも力強くキッパリとそう言い切った私に、晴明さんはもう何も言わなかった。