第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
当然の成り行きとして、私は帝に夜伽の相手を求められた。
そっち方面の『玩具』にされ………そうになった所を救ってくれたのは晴明さん。
実はこの人、安倍晴明だったんだよね。
私も詳しくは知らなかったけれど……ホラ、映画の『陰陽師』の人!
そして何故か晴明さんだけは帝と対等に話す事を許されていて
「この娘は僕が此処に連れて来たんだから、勝手な事しないでよね。」
と、私を帝の無茶な要求から救ってくれた。
それから、もう一人。
「では私の屋敷で彼女を預かりましょう。
そうすれば帝が彼女に会いたいと申し出た時には
直ぐに私が御所に連れて来られますから。」
そう言って、然り気無く私を帝から遠避けると共に、帝と二人きりでは会わせないようにしてくれたのは………
一橋慶喜さん。
慶喜さんは朝廷と幕府の間を取り持つっていう、聞いただけでウンザリしちゃうようなお仕事をされてる人なんだ。
それなのに帝とは真逆で……
誰に対しても優しいし、常に周りの人達を気遣ってるし、振る舞いは上品で話し方は穏やかだし……
とにかく本当に素敵な人!
水戸一橋家の当主だって伺ったけど………
一橋家って有名なの?
晴明さんが言うには、元の時代へ戻る為の扉が開くのは3ヶ月後。
それまではどうしたってここで過ごさなくちゃいけないんだから、クヨクヨしてたら勿体ないよね。
折角だから楽しまないと。
そう決めた私を慶喜さんは優しく目を細めて見ていてくれた。
「君が元気になって良かったよ。
私に出来る事があるのなら、何でも言っておくれ。」
なんて………
本当に良い人なんだ……慶喜さん。