第18章 ずっとずっとずっと、そのまま【薄桜鬼】
考えれば考える程に、不可解で嫌な予感だけが湧き上がる。
兎に角、時尾を捜さなければ………
そこで俺はふと思い付いた。
隣人だ。
家を出る時尾の姿を見ていないだろうか?
先ずは伺ってみる可きだ。
我が家の軒先から三間程離れた場所に建つ茅葺屋根の古い民家には夫婦者が住んでいた。
子は居らず、俺と時尾同様二人きりだった。
夫も妻も四十路半ばだろうか。
如何にも人が好さそうな似た者夫婦で、新参者の俺達をいつも何かと気遣ってくれる善き隣人だ。
特に内儀は膨よかで陽気な女であったから、時尾も色々と世話になっていたようだ。
三和土から外へ飛び出し、隣家へ視線を向けたその時………
内儀と時尾が連れ立って此方へゆっくりと歩いて来るのに気付く。
「時尾!!」
慌てて駆け寄った俺に、時尾は少し気不味そうな様子を見せた。
「……一さん。」
「どうしたのだ、時尾。
一体、何があった?」
「あっ……私、夕餉の支度もしないままで。
ごめんなさい。
今から直ぐ……」
「そんな事はいいっ!!」
声を荒げた俺に、怯えた様に身体を強張らせる時尾。
そんな俺達を見かねたのか、時尾を支えるようにして立って居た内儀が声を掛けて来た。