第18章 ずっとずっとずっと、そのまま【薄桜鬼】
時尾の中からどろりと零れ出す白濁を丁寧に処理し、その華奢な身体を抱き寄せ横たわった俺は躊躇い気味に聞いてみる。
「……この痣はどうした?」
「痣…ですか?」
「ああ……此所に。
痛むか?」
その青痣に指先でそっと触れてみると、時尾は特に気にした様子も無く答えた。
「気付きませんでした。
知らない内に何処かに打つけたのかもしれません。」
盲目の時尾にしてみれば、そんな事もあるのだろう。
だが、既に慣れ親しんだ家の中でこんな痣が出来る程に打つけるものか?
それとも何処かに出掛けた際に打つけたのか?
僅かに腑に落ちない部分もあったが、俺はそれ以上問い糾す事はしなかった。
「そうか。
気を付けろ。」
「はい……一さん。」
そう言って俺の胸に顔を埋める時尾は、出会って以来何一つ変わらない愛おしい女だ。
いや………変わった事が一つだけある。
此所最近の時尾は、俺に抱かれている最中に目を開けない。
過去、俺が「あんたの目に映る俺の姿を確かめたい」と願った時から、常に時尾の瞳は俺を見つめていた。
勿論見えていないのは分かっているが、それでも時尾はその大きな瞳に俺の姿を映し続けてくれていたのだ。
だが……何故だろうか。
今はまるで俺を拒絶するかのように目を閉じて仕舞うのだ。
実際に拒絶された事は無い。
時尾は常に俺の猥らな欲求に応えてくれていたのだから。
そうであるのに見えない目を見開いておけなど……矮小な事を望む自分が熟々情けない。
大して気にする事ではあるまいと自分自身に言い聞かせ、俺は時尾を抱き締めたまま眠りに堕ちた。