第18章 ずっとずっとずっと、そのまま【薄桜鬼】
時尾を娶り、この生活を始めて……直に二年になるだろうか?
地に足が着かず只管に生き急いでいた俺に、武士としての道を与えてくれた会津藩に微衷を尽くし、改易後の今は斗南藩士として仕えている。
時尾とは……俺がまだ新選組隊士として戦っていた頃に出会った。
その当時を思い返すと、今でも胸が締め付けられる。
総司、左之、平助、新八……そして副長に、近藤局長。
掛け替えのない仲間だった。
お互いに命を預け、預けられ戦った。
そうであったのに………今を生き存えているのは俺だけであろうか?
そして俺は新選組三番組組長として………時尾の兄を斬り殺している。
さすれば当然、時尾だけで無くその両親も共に斗南へと引き取り面倒を見る心算であったが、時尾の両親は
「態々この先老いていくだけの厄介者を背負い込む必要は無い。
盲目の娘を娶って貰えるだけで我々は幸福過ぎる程に幸福だ。」
と、俺に養われる事を望まなかったのだ。
結果斗南にて俺と時尾、二人きりの新生活が始まった。
極寒の地であり、元々は新政府軍に楯突いた会津藩の成れの果てという事も相俟って決して楽な暮らしでは無かったが、俺は此れ迄の人生の中で今が一番満たされていると言っても過言では無い。
藩士として必要とされている立場、潤沢では無いが己で稼いだ給金で妻を食わせてやれているという自尊心。
そして何より、最愛の時尾が俺の傍らに居てくれるという日々。
そんな中で、俺は毎晩の様に時尾を抱いた。