第3章 昨夜泣いた君と【薄桜鬼】
俺は優里を探した。
毎日、隊務の間隙を縫っては探して探して………
市中を駆け擦り回っても優里は見付からなかった。
優里の身に何か有ったのだろうかと居ても立っても居られない日々が続き、その後には本当は俺の事を愛してなんかいなかったのかと疑心した。
遂に何も言わず姿を消した優里に苛立ちを感じ始めた頃には、俺の疲弊は限界だった。
新選組の皆には何も話さなかったけど、当然俺の尋常じゃ無い様子に皆気付いているようだ。
特に一君は常に俺を気遣う言葉を掛けてくれていた。
「余り無理はするなよ、平助。」
「別に無理なんてしてねえ。」
「……そうか。」
一君の気持ちを有り難く思いながらも、素直になれない自分が心底情けない。
この喪失感を、この苛立ちを全部打ちまけて仕舞えばきっと楽になれるのに…。
優里が居なくなって二月もすると、流石に俺も落ち着いて来た。
何か事情が有ったに違い無いと優里を気遣う思いも沸いていたけど、だからって納得はしていない。
それならそれで正直に話して欲しい……当然だろ?
そんなある日、唐突に一君に声を掛けられた。
「平助に話したい事が在る。
今日の暮れ六つ、近江屋に部屋を取って待っていてくれ。」
一君はそれだけを告げて足早に何処かへ行ってしまう。
………一体何なんだよ?
話なら屯所でだって……いや、屯所では出来ない話なのか?
色々思う所は在ったけど、俺は一君の言う通りにする事にした。
指示された通り、近江屋に取った部屋の中で一君を待つ。
もう暮れ六つは過ぎている筈なのに一君は現れない。
本当に何なんだよ?
皆して俺を振り回しやがって……なんて不貞腐れて寝転がって居ると、部屋の外から一君の声が聞こえた。
「平助、入るぞ。」
静かに襖を開けた一君は、部屋の中で大人しく待って居た俺の姿を見て安堵したようだ。
「すまない……遅くなった。
連れ出すのに手子摺ってな……」
その言葉に俺の鼓動がどくどくと高鳴る。
もしかして…………
「さあ……入れ。」
そう一君に促されて姿を現したのは……優里だった。