第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
愉しい時間はあっという間……
私はこの言葉をまた身を以て実感する事になる。
新選組の屯所で生活させて貰いながら、私はとても穏やかで幸福な時間を過ごして居た。
只お世話になるだけでは…と思い、御爨どんは勿論、洗濯や掃除…色々な雑用を引き受けさせて貰った。
それは私にとって何もかもが新鮮で愉しい時間だった。
男所帯の中に女一人という事もあって、私に艶っぽい視線を向ける隊士も多かったけれど、どうやら沖田さんが確りと釘を刺していたみたいだ。
後に原田さんから聞かされた話では
「ちゃんは僕の物なんだから、
指一本でも触れたら斬っちゃうよ。」
と、沖田さんは隊士達に触れ回っていたらしい。
そのお陰なのかどうかは分からないけど、隊士の皆も私に好意的に接してくれてとても居心地の好い毎日だった。
昼はくるくると働いて、夜には沖田さんに沢山愛して貰って……
『こんな日々が永遠に続けば良い』
心からそう願ったけれど………
時代は……
私のちっぽけな幸福すら、いとも簡単に踏み躙る。