第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
もう僕は指先だけでなく両の掌でちゃんの身体中を弄っていた。
僕だけが触れられる場所は何所?
そんなみっともない感情に突き上げられて、その手付きは少し乱暴になっている。
「………しないで。」
突然聞こえたちゃんの涙声。
「え……?」
ふと我に返って見下ろしてみれば、目に涙を浮かべたちゃんが恨めしそうに僕をじっと見上げていた。
「意地悪……しないで。
私………初めて…なのに。」
その言葉にどくんと鼓動を高鳴らせ息を飲むと、零れて仕舞いそうな涙を誤魔化す様にちゃんは手の甲で両目を隠す。
「私………
好きな人と…こういう事するの……
……初めて……なんです。」
「………っ!!」
そっか……
ちゃんが僕を好きだと認識してから初めての行為だよね。
何の見返りも無く、唯純粋な想いだけで男に抱かれるのって……
ちゃんは初めてなんだ。
僕の胸は痛いほどに締め付けられる。
本当に、君って………
ちゃんの手をそっと退かせば、その目からはもう涙が溢れていた。
「……可愛いなぁ、もう。
そんな顔を見せられると堪らなくなる。」
退かした両手を優しく布団に縫い付けて僕は啄む様に口付ける。
「ねえ、何度も言ったけど……もう一回言っても良い?」
小首を傾げるちゃんは更に可愛いな。
「僕は、君が好きだよ。」
「沖田さん……」
ちゃんは濡れた瞳のまま嬉しそうに微笑んだ。
「僕は君が好きなんだから……
ちゃんの初めて……
僕が貰うね。」