第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
次に目を覚ました時には私の傍らには誰も居なくて、部屋は随分と薄暗くなっていた。
こんなにぐっすりと眠ったのはいつ以来だろうと、覚醒しきれない頭で考えていた時……
「ちゃんっ!」
ぱしんっ…と勢い良く開かれた障子戸の先に居たのは、段だら羽織を着たままの沖田さんだった。
沖田さんはどこまで話を聞いたのだろうか。
もう全て知っているのだろうか。
一体どんな顔をして何を言えば良いのか見当も付かず黙ったままの私に歩み寄った沖田さんは、がくっと膝を着くと唐突に掛け布団を剥いで私の身体を力強く抱き締める。
「あの……沖田…さん?」
「巡察から帰って来たら
ちゃんが此処に居るって左之さんに聞かされて……
良かった。
ちゃんが無事で本当に良かった。」
沖田さんの腕の力はどんどんと増して行き、私が息苦しさに身を捩ると
「こーら、総司。
は体調が良くねえんだ。
無理させるんじゃねえよ。」
苦笑を浮かべた原田さんも部屋に入って来た。
「あ……ごめんね、ちゃん。
苦しかった?」
「いえ……大丈夫です。」
抱き締める力は緩めてくれても未だ私の身体を手放そうとはしない沖田さんへの想いが溢れて、私もそっと沖田さんの背中に腕を回す。
そのままお互いに抱き締め合っていると、また原田さんが沖田さんを制した。
「ほら、総司。
をゆっくり寝かせてやれ。」
「うん、そうだね。」
漸く私の身体から離れた沖田さんは何かを考える様に眉間に皺を寄せると
「でも、やっぱり……」
そう言っていきなり私を横抱きに抱え上げた。
「ちゃんを此処に置いておけないや。
左之さん、ちゃんは僕が貰って行くね。」