第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
「有り難うございます。
でも、私は………」
「それにお前は、総司とも懇意にしてくれてるんだろ?」
私の言葉を遮る様に告げられた土方さんの声に全身が凍り付いた。
………知られているんだ。
私が原田さんだけじゃなく、沖田さんとも寝た事を。
「どう…して……?」
その訳を恐る恐る震える声で問うてみる。
それに答えてくれたのも土方さんだった。
「総司はな……俺達にとって弟みたいなもんだ。
……手の掛かる面倒臭え弟だが。
その総司が最近心底嬉しそうに笑うんだよ。
可愛くて仕方無い女に出逢えた…
その女も自分を好いてくれているんだ…ってな。
俺は……あんな風に笑う総司を初めて見た。」
その先を続けたのは原田さん。
「あの総司がそこまで言う女ってのはどれ程良い女なんだって
当然、気になってな。
それで善く善く話を聞いてみる内に
そりゃに間違いねえって確信したんだ。
………そうなんだろ?」
聞かされた話に何て言えば良いのか分からず私は只小さく頷くと、今度は近藤さんが私の頭を撫でながら言った。
「そうであれば我々新選組が君を護らぬ理由は無い。
君は此処で暮らしながら先の身の振り方をゆっくりと考えなさい。
見世に戻るも、里に帰るも、自立して生きて行くも……
君が決めた事に新選組は協力を惜しまないぞ。
それから何よりも……
総司を好きになってくれて有り難う……さん。」
結局私はわんわんと大声で泣き出して仕舞い、三人に散々宥められた。
「兎に角、今日はゆっくりと休みなさい。」
近藤さんと土方さんはそう言って部屋を出て行き、残った原田さんは布団の中でぐずぐずと泣き続ける私の背中を擦ってくれて、その心地好さに私はあっという間に眠りに堕ちる。