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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】


一人じゃない……二人?

私が不安も顕に原田さんを見つめると

「ほら……来やがった。」

原田さんは悪戯が成功した子供の様ににかっと笑う。



「やあ、体調は大丈夫かい?
 横になったままで構わないんだよ。」

そう私に微笑み掛けながら入って来たのは、如何にも優しそうで穏やかな雰囲気を纏った男性。

そしてもう一人の男性は長髪で怖い程に整った顔をしている。

「さて、先ずは自己紹介から始めようか。」

二人共、原田さんと同じ様に布団の傍に腰を下ろし、私を見つめた。

「私は新選組局長の近藤勇。
 そしてこっちは副長の土方歳三だ。」

笑顔のまま穏やかに紡がれたその言葉に一瞬ぽかんとする。


新選組の局長と副長………


「も…申し訳ありません。
 あのっ……私っ…」

余りの畏れ多さに身体を震わせ、ばたばたと布団の上に正座をして深々と頭を下げると

「いやいや、そんなに畏らないでくれ。」

近藤さんはそっと私の肩に手を掛けて身体を起こしてくれた。

「さん……だったかな?
 君の事は原田君から聞いたよ。
 ……辛かったね。」

私の顔を覗き込む本心から労わる様な近藤さんの視線にじわりと涙が滲む。

「うん。
 君には原田君が世話になっているそうだね?」

『世話になっている』という言い回しに、私は酷く自分が穢い気がしてぐっと俯いた。

だって私は原田さんの性欲を満たすだけの女。

『世話をする』なんて偉そうな物じゃ……


「ああ…言っておくが、お前を蔑んでいる訳じゃねえぞ。」

突然それまで無表情で黙っていた土方さんが口を開く。

「俺達はな、日々命を賭して戦ってる。
 明日には死んじまうかもしれねえ身だ。
 そんな俺達に一時でも夢を見させてくれるお前の様な存在は
 何よりも有難いと思ってる。」

その言葉に俯けていた顔を上げると土方さんは微かに笑みを浮かべ、近藤さんはうんうんと頷いていた。
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