第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
「最近はめっきり僕の相手をしてくれないよねぇ?
どうしてかなぁ?
間夫でも出来たのかい?」
じりじりと私に近付いて来る男が浮かべる下品極まりない笑みに悪寒が走る。
確かにここ最近は気心の知れた男衆に頼んで、見世に此奴が現れたら先に他の客に付けて貰う様にしていた。
でもそんな事を悟られる訳にはいかないと、私は必死で笑顔を作る。
「そんな事ありませんよ。
また是非……お待ちしていますから…」
「ええ?本当かい?」
私の全身を舐め回すみたいに、舌舐めずりをする男の姿を目にしたらもう限界だ。
「あのっ……私、もう見世に戻らないと…」
慌てて踵を返す私の背後に男が近付く気配を感じた瞬間、
「…………っ!?」
私の身体は男の両腕に絡め取られた。
「……何をっ?」
「良いじゃあないか、。
お互い素知らぬ仲でもないだろう?」
「止めてっ……」
「僕はの身体に在る黒子だって全て知ってるんだ。
ああ、丁度良い。
それがどこに在るのか…今此処で教えてあげよう。」
そう言うや否や、男の手が襟元と裾を割って着物の中に入り込んで来る。
「嫌っ…」
「そんな事言って……
本当は嬉しいんじゃないのかい?
は好き者だからねえ。」
どんなに身を捩っても、無遠慮に私の肌を這い回る男の手から逃れられない。
どうして、公衆の面前で辱められなくちゃいけないの?
私はこんな酷い仕打ちをされる程、何か許されない事をしたの?
どうして……どうして……