第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
「構わない。
……自分でちゃんと処理…するから……」
これまでずっとそうして来たんだ。
十五で見世の主人に初めて仕込まれた時から。
男が吐き出した後、自分で中から掻き出して洗う。
そんな虚しい行為をずっとずっと続けて来たんだから……。
「でも……」
男が何か言い掛けたのを遮る様に私は身を起こす。
「まだ夜は明けてないですよね?
私、寝ちゃって……ごめんなさい。
もう一回します?
今度はちゃんとお望み通りにしますから……」
そう言って襦袢を脱ごうとする私の身体を男の両腕が引き寄せ、再びその胸に抱き締められた。
「あの……?」
「もう良いよ。
ちゃん、初めて達ったから疲れたでしょ?
今夜はこのまま……ね?」
「でもっ……
買って貰ってるのに……」
自分の口から出た言葉に思いも掛けず傷付いて、それを誤魔化す為に私は男の胸に顔を埋める。
「そっか……
ちゃんは真面目で良い娘だなぁ。」
男はくすくすと笑うと
「じゃあさ……僕と話をしよう。」
優しい手付きでゆっくりと私の髪を梳き始めた。