第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
「ん……」
温かく優しい心地を感じながら目を開くと、私は男の腕に抱かれて意識を失くしていたみたいだ。
「あ、気が付いた?」
そして男の綺麗な顔が間近に迫り、私は自分でも分かる程に頬を染めて仕舞う。
ふと今の状況を見てみれば、男は真っ裸であったが何故か私はきちんと襦袢を着ていた。
「これ……貴方が着せてくれたの?」
男に散々啼かされて、自分が自分じゃ無い様な感覚を与えられたのは覚えてる。
でもその先は全く思い出せなかった。
「ちゃんのお腹を一杯汚しちゃったからね。
綺麗にしたついでに僕が着せたよ。
ちゃんが風邪引いちゃうかな…って。」
お腹を汚して、綺麗にした……?
それって……
「もしかして……外に出したの?」
「うん。」
男は然も当たり前の様に笑顔で頷く。
私の中を穢す事無く、しかもその吐き出した物を始末した上に襦袢まで着せてから寝かせてくれる。
そんな風に……
まるで大切な女みたいに扱われた事……無い。
「別に……中に出しても良かったのに。」
私は拗ねた様に男から視線を反らして呟いた。
嬉しくて鼓動が痛い位に鳴っている癖に、私はどうして素直になれないのだろう。
可愛気の無い自分が本当に嫌になる。
「そうなの?
でも中に出しちゃったらちゃん困っちゃうよね?」
素朴な疑問を問う子供の様な目をして一層顔を寄せてくる男に私の鼓動は更に高鳴った。