第16章 七ツ下がりの雨【薄桜鬼】
それから三日程して、私にしては珍しく顔見せ前に客が付いた。
馴染みならまだしも、一見で顔も見ずに私を選ぶなんて物好きな男もいるものだ…なんて思いながら指定された部屋へ入ってみると
「あー…良かった。
ちゃんと会えたぁ。」
其処に居たのはあの煙管を拾った男だった。
「お見世の人に一生懸命説明したんだよ。
年の頃は十八、九で、目がくるんとしてて、色白で…って。
そうしたら『それは多分、でしょう』って言われてさ……
君、ちゃんって言うんだね。
今夜一晩、ちゃんを買っちゃった。」
男は如何にも嬉しそうに笑いながら捲し立てる。
「一晩も!?
あの……どうして?」
私が驚きを隠せずきっぱりと男に問い掛けてみれば
「だってね、あの煙管…凄く高く売れたんだ。
ちゃんを一晩買ってもお釣りの方が多い位にね。
足りなければ自分のお足で君を買おうと思ってたから凄く助かったよ。」
相変わらず男はにこにことしていた。
私が聞きたいのはそういう事じゃないんだけどな……
そう思ってみた所で、所詮私は一晩幾らで自分を売る女。
そして目の前のこの人はそれを買っただけの男だ。
であれば、其所に意味など求めても野暮ってものでしょう。
「では、今宵一晩……
じっくりと愉しんで行って下さいな。」
私は何時も通りに科を作って男に寄り添い、その股間にそっと手を這わせる。
「こうやって近くで見ると……
やっぱりちゃんって可愛いよね。」
「…………っ!?」
この状況には沿ぐわない子供の様なあっけらかんとした言葉に迂闊にも頬を染めて仕舞うと
「ここで『君に会えただけで充分だよ』とか言えたら格好良いんだろうけど
僕はそこまで出来た人間じゃ無いから………
良いよね?」
男はあっさりと私を布団の上に組み敷いた。