第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
言うや否や、かさかさと枯葉を踏み締める音がして
「………左之さん。」
震える声で原田を呼ぶが近付いて来た。
「おいおい……俺はまだ死んじゃいねえぞ。
こんな幻想を見ちまうなんて………」
「ふふ……幻想じゃないよ。
ほら、ね?」
原田の目前に屈み込んだは、その原田の血塗れの手を取り自分の頬に触れさせる。
「ああ……温けえ。
本当に幻じゃねえんだな。」
原田の指がを擽る度にその白い頬が赤く染まっていったが、は全く気にする事無く原田の手に頬を擦り寄せた。
「ありがとう……左之さん。
左之さんと近藤さんが私の柵を断ち切ってくれたお陰で
私はずっと不知火さんと一緒に居られた。
私はずっとずっと幸福だったよ。」
「そうか。
そりゃあ何よりだ。」
「本当に………
本当にありがとう、左之さん。」
は微笑みながらぼろぼろと涙を溢したが、どうやら原田はもう既に視界も暈けちまってるみてェだ。
「ああ……やっぱりは可愛いな。
不知火なんかに渡すんじゃなかったぜ。
畜生………
を頼んだぜ、不知火。
泣かせたりしたら承知しねえからな。」
そのを今、泣かせてるのは原田……手前ェだろうが。
そう思いながらも俺が
「当然だろ。
任せとけ。」
不敵に喉を鳴らして言ってやれば、原田は安心した様に瞼を落とす。
そしてそのまま、二度と目を覚ます事は無かった。