第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
「俺も不知火も人間では無い。
………鬼だ。
お前達人間とは比べ物にならない能力を持っている。」
「はあ……そうですか。」
それがどうしたと言わんばかりのの態度に風間は明白に動揺して見せる。
「……驚かぬのか?
俺達が恐ろしくはないのか?」
するとは清々しい程に破顔した。
「不知火さんは恐くなんてないですよ。
私……鬼よりも鬼らしい人間を知ってます。
不知火さんはそんな鬼以上の人間から私を救ってくれたんです。
だから恐い筈がありません。」
一瞬の間の後、風間は低く喉を鳴らし、そしてその後は酷く愉快そうに声を上げて笑う。
「これは良い……」
そして風間の長い指がの顎を捉え上向かせると、そこにずいと顔を寄せた。
「お前は存外に美しい。
気に入った。
俺の妻になる気は無いか?」
「手前ェ……風間!
に触るンじゃねェ!!」
俺がそう咎めても風間は何処吹く風で続ける。
「鬼としての能力も、血統も、家柄も……
全てに置いて不知火より俺の方が遥かに上だ。
俺に乗り換えた方が利口だと思うが……どうだ?」
………確かにな。
風間の言っている事は正しい。
お互い本気を出して戦えば、俺は到底風間には敵わねェだろうよ。
だが、に関しては………
俺は風間の震える程に綺麗な顔を寄せられても、全く動揺する様子を見せないをじっと見つめた。
「有り難うございます。
でも私、不知火さんじゃないと駄目なんです。
不知火さんが好きで好きで……もうどうしようも無いんです。
初めてお会いした貴方に聞く事では無いのかもしれませんが
逆にもっと不知火さんに私を好きになって貰う為にはどうすれば良いのか、
ねえ、風間さん……教えてくれませんか?」