第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
「なあ……不知火。」
その時、原田が唐突に俺を呼ぶ。
その声に俺とが同時に視線を向けて見ると、原田は少し困った様に笑っていた。
「あのな、俺もに惚れてたんだぜ。
そんな俺には今のお前達は目の毒以外の何物でもねえ。
さっさとを攫って何処へでも行っちまってくれよ。」
「でも……左之さん………」
が俺に着いて来たいと思っているのは間違い無いだろう。
だが新選組に任された仕事、江戸の実家の問題…全てを放り出して仕舞って良いのかと躊躇っているのが俺には痛い程に伝わって来た。
そしてそれはどうやら原田も同じだったみたいだ。
「……お前は何も気にするな。
全てを俺に任せておいてくれねえか?
俺と近藤さんで何もかもきっちり片付けてやるからよ。」
「良いのか……原田?」
喉を詰まらせて何も言えないでいるに変わって俺が問い掛ける。
「ああ、構わねえ。
への餞にそれ位させてくれ。」
そして原田はへ優しい視線を向けた。
「だから……。
必ず幸せになってくれよ。
不知火に一杯可愛がって貰って、ガキもぽろぽろ産んでよ……
それで、この先ずっと笑いながら生きてくれ。」
「左之さん……」
「ん……元気でな。」
そう言ってもう一度抱き締め合う原田と。
そんな二人の姿を見つめる俺自身も、自然と顔が綻んでいる事に気付く。
その後、着衣を整えた俺とは手に手を取って、これから二人で創り行く未来へと駆け出した。