第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
「貴方が好きなの………
不知火さん。」
思いも寄らなかったの一言に、俺と原田は同時に息を飲む。
「いや……だって、手前ェ……」
自分でも驚く程に動揺して俺がを見つめると、肩を抱く原田の手をそっと解いたが俺の胸に身を寄せて来た。
「好きです……不知火さん。」
「じゃあ、何故っ…」
の細い両肩を掴みその身を押し剥がして、俺は明白に苛立ちを孕んだ声色で強く問い掛ける。
「俺の想いに応えなかった?
俺が何度口説いても手前ェはいつも曖昧に逸らかしやがったクセに!」
こんな風に女を責め立てるなんて俺らしくもねェ。
常々何よりもみっともねえと思っていた行為を晒している己が酷く情け無くて、だがそれがまた益々自分を昂らせて仕舞う。
「………ごめんなさい。」
は打ち拉がれた様に俯き、そのまま言葉を続けた。
「不知火さんが真っ直ぐに想いを伝えてくれるのが本当に嬉しくて
そしてそんな不知火さんにどんどんと惹かれて行って……
でも、左之さんや近藤さんの為にも、
任された仕事はちゃんと熟したかった。
それに……」
そこまで言ってはくっと顔を上げる。
その瞳には今にも零れ落ちそうな程に涙が溜まっていた。
「弟に嬲られ続けて穢れた私なんか
真っ直ぐな不知火さんには相応しく無いって……。
不知火さんに愛して貰いたいなんて
そんな図々しい事を望んじゃ駄目なんだって……」
「………馬鹿野郎っ!」
「んっっ……」
小刻みに肩を震わせるを力一杯抱き締め、噛み付く様に口付ける。
そしての身体から強張りが解けたのを見計らい唇を離してから俺は告げた。
「自分の事を穢いなんて言うな。
は何一つ穢れてなんていねェ。
もう金輪際そんな巫山戯た事を言うのは許さねェからなァ。」
「不知火…さ…」
遂にぼろぼろと溢れ出した涙を吸い取る様に唇で拭い
「愛してる……。
手前ェの過去がどんなだったって俺には関係無ェ。
だから手前ェのこの先の未来を全部、俺にくれ。」
真っ直ぐにを見つめて言う。
「うん……うん…」
再び盛大に涙を溢れさせて、は何度も何度も頷いた。