第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
そんな動乱の事後処理も済み漸く落ち着いた頃、俺は近藤さんにの事情、そして俺との関係を隠す事無く仔細に伝えた。
俺の話を聞いた近藤さんは驚き、悲しみ、苦しみながらに平身低頭詫びた。
がその弟に嬲られ始めたのは近藤さんが入洛して何年も経った後だ。
近藤さんはその養子である弟の顔すら知らねえ。
だから近藤さんがに詫びる必要などある筈もねえのに。
今にも泣き出しそうな顔をして「すまない」「すまない」とを抱き締め延々と謝罪する近藤さんを見て、こういう人だから皆が近藤さんの為ならば…と命を賭して戦えるのだろうなと俺は思った。
そして近藤さんは「さっさと江戸へ向かいを娶って来い」と力強く俺とを送り出してくれた。
「今帰ったぜ。」
そう声を掛けて玄関の板戸を開ければ
「お帰りなさい、左之さん!」
夕餉の支度をしていたが嬉しそうに駆けて来る。
「こら…何遍言ったら分かるんだ、。
走るんじゃねえよ。
転んだりしたらどうすんだ。」
俺はそう窘めて、はち切れそうな程に膨らんだの腹を優しく撫で廻した。
屯所に程近いこの長屋で、と暮らし始めてもう直きに一年になる。
江戸に居たの両親は酷く安心した顔をして俺にを任せてくれた。
苦言の只一つも無く、両親は逆に涙ぐみながら俺の手を握り礼を言った。
その弟って野郎も一発殴ってやらなきゃ気が済まねえと思っていたが、そいつが俺を見る怯え切った矮小な視線にこんな野郎に俺の拳を使う事すら勿体ねえと結局は何もしなかった。
そして直ぐに京へ戻り、俺とは新選組の皆に見守られて祝言を挙げたんだ。