第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
不知火が出て行った後も、俺とはまるで縫い付けられて仕舞った様にお互いを抱き締め合う。
そうしながら俺はの耳元に顔を寄せ囁いた。
「……不知火を恨んでるか?」
今更問う事じゃねえだろう。
不知火は薬を使ってを籠絡させ、身体を弄んだんだ。
それに便乗した俺だって不知火と同罪……いや、それ以上だろうな。
に責められて然る可きだ。
恨んで当然、聞くまでもねえ。
そんな事は分かってる。
分かっているのに………
だがは迷う事無く即座に首を横に振る。
「恨んでなんかいない。」
「どうして……?」
自分でも、俺は一体どうしてえんだと思う。
不知火の事を恨んで欲しい訳じゃねえ。
恨まれて当然だが、僅かでもその想いを汲んで許しを乞おうと思っていた矢先にの「恨んでいない」という答え。
もう十分じゃねえか。
それ以上何を望むって言うんだ。
なのに俺はを問い詰めた。
「何故だ、?
恨んで良いんだ。
勿論、俺の事だって……
もっと激昂して構わないんだぜ?」
「だって………」
この後に続くの言葉に、俺の考えがどれ程浅はかであったのかを思い知らされる事になる。