第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
「何だァ……コイツ、新選組の関係者だったのかよ?
まあ只の芸妓だとは思ってなかったがなァ。」
愉悦を含んだ物言いの不知火に、直ぐ様飛び掛かって殴り倒したい衝動を俺は何とか抑え込む。
今は何より不知火の膝に抱えられて居るの安全が最優先だ。
「……知らなかったって言うのかよ?」
怒りを滲ませた声で脅し付けながら俺は部屋に入り、障子戸をぴたりと閉めた。
のこんな姿を他の輩に見せる訳にはいかねえ。
「ああ、知らなかったね。
俺は只、に惚れてるだけだからな。」
何が可笑しいのか……不知火はくつくつと笑いながら続ける。
「一月程前か……?
長州の会合に同行した時、コイツを見初めてな。
欲しくて堪らなくなったんだよ。
そういうのって理屈じゃねェだろ?
原田だって分かるよなァ?」
ああ、痛い程に分かるぜ。
今の俺自身が『そう』だからな。
「ふんだんに金と手間を掛けて何度も口説いてはみたが、
は堕ちやがらねェ。
だから強行手段に出させて貰ったって寸法だ。」
「不知火……手前ぇ、を嬲りやがったのか?」
そう問う俺の声は我を忘れる程の怒りに震えていた。
「おいおい……人聞きの悪い事言うなよォ、原田。
これでも随分と洗練な方法を選んだんだぜ。」