第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
その後の数日も特に何事も無く過ぎて行った。
そして今日もまた俺がとの合流場所に着くと、の姿は其処に無かった。
大抵はの方が先に着いて居る筈なのに珍しい事もあるもんだ。
だが、それから暫く待ってみてもは一向に現れねえ。
流石に一刻経っても姿を見せねえと成れば、何か尋常じゃ無え厄介事がの身に起こっているのかと焦燥感に突き上げられる。
俺は居ても立っても居られずが身を置く置屋に向かって駆け出した。
置屋の主人を問い詰めてみると、は昨夜宴会に出張って以来帰って来ていないと言う。
「宴席で気に入った男としけ込んで一晩二晩帰って来ないなんて良くある事だ」と下卑た笑みを浮かべる主人を締め上げ、俺はが向かった見世を聞き出した。
その見世に入り、昨夜の宴会以来閉じ籠もってる部屋は無いかと尋ねると、芸妓を連れ込んだきり全く出て来ない部屋が一つだけあると顔見知りの女中が教えてくれた。
其処にが居るに違いねえ。
女中に礼を言ってから逸る思いそのままの足取りでその部屋に向かい、俺は無言で勢い良く障子戸を開け放つ。
「よぉ……原田。
久し振りだなぁ。」
其処に居たのは不敵な笑みを湛えた不知火匡だった。
不知火は下品な色合いをした布団の上に腰を下ろし、俺を見上げて喉を鳴らす。
そんな不知火に俺は悪態を吐く事すら出来ないで立ち尽くして居た。
何故なら……
不知火の膝には、襦袢一枚の姿で意識を朦朧とさせたまま、ぐったりと全身を弛緩させるが抱えられて居たからだ。