第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
勿論には客を取らせたりはしていない。
置屋の主人にはきっちりと話を付けて、怪し気な連中の宴会があれば其処に潜り込ませる手筈になっている。
は何度かそう言った宴会に芸妓として出張ったが、今の所は此れと言って有益な情報は得られていない。
今日も「特に気になる事は無い」と告げたの頭をくしゃりと撫で、俺が屯所に戻ろうとすると
「あの……左之さん。」
が俺の上着の裾をきゅっと掴んだ。
「どうした?」
「あの……ね……」
連絡役は俺一人と言う事で、も随分と俺に心を開いてくれてはいるが、それでもまだ遠慮させて仕舞うのだろうか?
「何かあんのか?
どんな些細な事でも構わねえから、何かあんなら言ってみな。
………ん?」
出来る限りの優しい声色で促して遣ってもは言い淀んだまま首を振る。
「ううん。何でも無い。
本当に態々報告する程の事じゃないから。」
どこか吹っ切るように可愛い笑顔を見せたに一抹の不安を覚えたが
「そうか。
話したくなったら何時でも言えよ。」
俺も深く問い質す事はしなかった。