第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
は近藤さんの遠縁に当たる娘で、偶々近藤さんの実家からのお遣いで京にやって来た。
齡は十八。
その割には幼さの残る、如何にも男好きのしそうな愛らしい容貌をしていた。
おまけに江戸っ子気質の気っ風の良さ、近藤さんに依ればガキの頃から大人の話に口を出す程に利発であったらしい。
新選組としてはこの偶然とは思えねえ好機を逃す訳には行かなかった。
を危険な目に遭わせる事は絶対にしねえ、必ず守ってみせるからと渋る近藤さんを説得し、にも事細かに説明を繰り返した。
元々近藤さんを兄の様に慕っていたは「近藤さんのお役に立てるなら」とあっさり承諾してくれた。
そしてを田舎から出稼ぎに来た娘だと言う体で遊廓の置屋に身を置かせて、との連絡役に俺が選ばれたって経緯で今に至る。
頻繁に遊廓に出入りし顔も広い俺が選ばれたのは理解出来るが、遊廓に通い詰めているなど正直には知られたく無かったぜ。
そう……そう思って仕舞う程、俺は一目見た時からに惹かれていたんだ。
は俺達の想像以上に仕事を熟してくれた。
日に一度、決められた場所で俺とは情報交換の為に顔を合わせる事になっている。
その時に語られる的確な内容や、の鋭い洞察力には俺も舌を巻く程だった。
そう言った事も相俟って、俺はどんどんに惹かれて行く。
いや、既にそんな生易しい想いじゃねえ。
をこの手で滅茶苦茶に可愛がってやりたい衝動に駈られたのだって一度や二度じゃねえんだ。