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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第14章 God bless you【ドリフターズ】


幾筋もの透明な糸を引いて漸く唇が離れた所で『空神様』は僅かに眉を顰める。

「手前ェの決意は嬉しい。
 嬉しいんだが……
 その漂流者(ドリフ)狩りってのがなァ……」

確かに、私一人の時に廃棄物(エンズ)に襲われて仕舞ったら一溜まりも無い。

私は戦う術を何一つとして持っていないから。

『空神様』も自分が居ない時に何かあったら…と心配してくれているんだ。

自分の不甲斐無さに忸怩たる思いで唇を噛んだ時、

「どーやらその心配は無さそうよ。」

船室の入口から声が聞こえた。

その方向へ顔を向けて見れば、其処には腕を組んで壁に背を預けたサン・ジェルミさんが立って居た。

そして私と『空神様』に向かって「どーも♥」と、満面の笑みを浮かべて軽く手を振っている。


………一寸、待って。

私と『空神様』は……素っ裸なんだけど……


「きゃあっ…!」

私は慌てて足元に丸まっていた毛布を引き上げ自分の裸体を隠すと、『空神様』も私の身体がサン・ジェルミさんから見えない様に覆い被さってくれた。

「手前ェ……オカマ野郎ッ!
 覗いてやがったのか?
 出歯亀かッ!?
 コノヤロウ!」

「いやーねー。
 覗きなんてしてないわよォ。
 ちょーっと声を掛け辛かっただけじゃない。」

そう言いながらも何か含みのあるサン・ジェルミさん笑顔を見れば、私の羞恥は際限無く高まって行く。

「……………どっから聞いていやがった?」

『空神様』が凄味を帯びた低い声で問い掛けても、サン・ジェルミさんは何処吹く風だ。

「そーねェ……
 『飲ませて欲しいです』のちょっと前辺りかしら?」

嘘っ!?

もう私は羞恥に耐えられなくて『空神様』の腕の中でぎゅっと身を縮める。

「手前ェ……」

そんな私に気付いた『空神様』も一層私をサン・ジェルミさんの目から隠す様に抱えてくれた。
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