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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第14章 God bless you【ドリフターズ】


「さあ…遠慮無く遣ってくれ。」

「……戴きます。」

差し出された湯飲みを手に取って口を付ける。

久し振りに飲む懐かしい日本茶の味と香りに少し泣きそうになった。

そんな私を労わる様な目で見つめていた山口少将は、微笑みを絶やさないまま語り出す。

「菅野大尉から貴女の兄上についても聞いているよ。
 御国の為に見事に散って逝かれたそうじゃないか。
 この不肖山口多聞、心から敬意を表しよう。」


散る事が『見事』だなんて、私には思えない。

幾ら敬意を表されたって、大好きだった兄さんは帰って来ない。

こんな事を得意気な顔で話すこの人は、やはり『人殺し多聞丸』と呼ばれるに値する人なのだ。

この人が悪い訳じゃ無い。

そんな事は理解している。

只、私とは分かり合えないだけの事。


「あの……夫と、他の皆さんは何処に居るのでしょうか?」

燻る気持ちを切り替えて山口少将に問い掛けたその時……

船の外から聴き慣れた轟音が轟き始めた。

「この音は……」

不安も顕に呟く私。

そしてそんな私とは対照的に、山口少将は愉快そうに喉を鳴らす。

「おお……始まったみてえだなぁ。
 さて、貴女も御主人の勇姿を見てみるかい?」
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