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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第2章 徒桜【るろうに剣心】


「そんなあの人に
 『腐った徳川体制を終わらせて
 市井の人々の為に新時代を築きたい
 誰もが自由に安穏と暮らせる世の中を創りたい
 だから俺と共に犠牲になってくれ』と
 涙を流しながら頭を下げられたら………
 断る事など出来なかった。」

俺の胸に掛かる翠の吐息が熱くなり

「ごめんなさい……蒼紫様。
 ……ごめんなさい……ごめんなさい。」

涙声で何度も謝罪を繰り返した。

翠の苦悩が痛い程に伝わる。

何を言った所でその苦悩が和らぐ事は無いだろう。

だから俺はたった一言だけ……思いの丈を込めて呟いた。

「もう……良い。」




翠を逃がそう。

幸いにも今の所、蒲生君平の企みを掴んでいるのは御庭番衆だけだ。

外部に漏れ出す前に俺が時間を稼いで、何とか翠を幕府の手の届かない所に逃がせば蒲生一人の粛清で済むかもしれない。

蒲生が翠の話したような男ならば、敢えて翠に課した役割を口外する事も無いだろう。


翠は………逃げ切れる。
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