第13章 一月一日【薄桜鬼/ドリフターズ】
「へー…
何かそれ、切なくて良い話だなぁ。」
「何処が良か話じゃ。
初めての女子に逃げられたんぞ。」
「で、そのお姉さんとはまた会えたの?」
「いンや、それきりじゃ。
親父(おやっど)にも『女子一人、物に出来んとは』と
笑い飛ばされたわ。」
「うわぁ……
まさかお豊(トヨ)の筆下ろしがそんな情緒的だったなんてね-。」
「何ぞ、与一。
お前(まあ)、俺(おい)の筆下ろしをどんなんだと思っちょったが?」
「うーん、もっとこう……
戦場で、血塗れで……みたいな?」
「そんな訳無かが!
はああ…じゃっどん、何でん野郎同士で筆下ろしの話ばせなかんぞ?」
「いやいや、お豊(トヨ)。
下の話は存外と大事なのじゃぞ。
お互いのそう言った経験を晒す事で、親近感が生まれ絆が増す。
共に戦う者同士、下の話はしておくべきなのだ!」
「そういうもんかの?
まあ…信(ノブ)がそん言うなら、そうかもしれんの。」
「うむ。
素直で宜しい!」
「何にせい、俺(おい)は女子運には恵まれちょらん。
その後に娶った奥も気立ての良か愛くるしい女子じゃったが
子は成せなんだ。」
「そんなに卑屈にならないでよ、お豊(トヨ)。
ほら、まだこれから運命の出会いがあるかもしれないし…ね?」
「……此処で、か?
此処で出会ったんは『じゃんぬ』とか言う
火を操る物の怪みたいな女子だけじゃ。」
「うう…。
そりゃそうなんだけどさー…」
「まあ…そう言うてやるな、お豊(トヨ)。
与一はお前を気遣ってだにゃあ……」
「そんで、何でん信(ノブ)は笑っちょる?」
「え……いやいやいや…」
「はあ…何ぞ、くさくさするわ。
俺(おい)はちくっと散歩に出る!」