第13章 一月一日【薄桜鬼/ドリフターズ】
やっぱりまだ幼いんだなぁ…。
大の字になって大鼾を掻いている豊久を見下ろしてそう思った。
私を放ったらかしでそんな熟睡しちゃって…本当に危機感無いんだから。
一人でくすくすと笑いながら、私は着衣を整える。
さあ、家久に気付かれない内に此処を出なくちゃ。
あー…また親方に叱られちゃうなぁ。
島津家に潜入して、何も情報を仕入れないまま逃げ帰って来るなんてね。
でも……只管に真っ直ぐで、眩しい位に真っ新で…
この先、敵に廻したら酷く厄介になるだろう若武者が居たって言うのは大きな収穫かも。
眠る豊久の傍らに屈んで、その髪をそっと撫でる。
「貴方の子……産んであげられなくてごめんね。」
豊久には、一つの翳りも無い御天道様の真下で無邪気にころころと笑う事が出来る姫君がお似合いだ。
私みたいな穢い女は相応しく無い。
「豊久の正室っていうのも……
かなり魅力的だったんだけどね。」
そして私は豊久の額に口付けてから立ち上がり
「……じゃあね。」
笑顔で一言呟いてから、先が見えない闇に向かって駆け出した。