第13章 一月一日【薄桜鬼/ドリフターズ】
「うん……どうしよう。」
態とらしく困った顔をして上目遣いで豊久を見ると
「ほうかぁ!」
一層嬉しそうに満面の笑みを浮かべた豊久が、いそいそと私を拘束している荒縄を解き始める。
えーっと……これはどういう状況なのかな?
それでも身体が自由になるのは望む所だ。
大人しくされるがままになっている私に向かって、また豊久は私の想像を遙かに越えて来た。
「そんならは、俺(おい)の正室ぞ!
大事に大事にせねば罰が当たるわ。」
……………何、言ってんの?
この乱世の何処に、自分の家に忍び込んで来た間者を正室にするって男が居るのよ?
……この子、途轍もなく馬鹿なんじゃないの?
訳も無く鼓動がどくどくと早鳴り、鼻の奥がつんと痛んだ。
「親父(おやっど)も義娘相手に容赦無いのう。
こん緊か括らんでも良かに。
、苦しかったかが?
気付いてやれんですまんの。」
もう………本当に……馬鹿じゃないの?
縛り付けていた荒縄を解き終わった豊久の手をそっと取り、私の帯へ導く。
「此れも…解いてくれる?」
豊久は吃驚した様な顔をして、だけど直ぐに帯を解き始めた。
解き終えればその流れで私の着ていた物をするりと肩から落とす。
「……綺麗じゃ。」
まじまじと私の身体を見つめる豊久の頭を、胸に押し付ける様にして抱えた。
「私を正室にしてくれるんでしょ?
じゃあ此れは…全部、豊久の物だよ。」