第13章 一月一日【薄桜鬼/ドリフターズ】
もう、これだから島津家に潜入するなんて嫌だったのよ。
戦闘狂一族の鬼島津。
御家芸は『穿ち抜き』に『捨て奸』。
私、生きて此処を出られる気がしない。
そんな風に自分の運命を呪っていると、豊久の目がじっと私に向けられている事に気付く。
その目は好奇心が抑えられないと言った様子できらきらと輝いていた。
「えーと……」
「俺(おい)は島津家久が子、豊久じゃ。
お前(まあ)の名は何という?」
あのね、別に自己紹介がしたかった訳じゃないんだけど……
「…と申します。」
それでも私は馬鹿正直に自分の名前を名乗って仕舞う。
これだから私は未だに親方から半人前扱いされちゃうんだろうなぁ。
「では、。
宜しく頼む。」
そう言ってぺこりと頭を下げる豊久。
えっと……『宜しく頼む』って何を、かな?
あー…うん、その期待に満ち溢れた顔を見れば分かるよ。
確かに女を貰ったってなれば、そうなるよね。
「貴方は……」
「貴方なんぞ畏まらんで良か。
豊久で構わんど。」
「じゃあ……豊久は、今年十五?」
「おう、元服じゃ。」
「あのね、私は今年二十になるの。
こんな年増相手じゃ嫌でしょ?
だから……」
子供を宥め賺す様な笑みを浮かべて豊久を見ると、その表情は一層輝きを放っていた。
「最初の相手は年上の女子が良かと聞いちょる。
丁度良か具合じゃな、。」
そんな嬉しそうににこにこされたら、もう何も言えなくなっちゃうよ。
……って言うか、『最初』?
「もしかして豊久………初めて?」
恐る恐る問い掛けてみれば……
「おう!
筆下ろしが姫始めとは、縁起が良かよのう!」
その満面の笑みには本当に……何も言えなかった。