第13章 一月一日【薄桜鬼/ドリフターズ】
「豊久ーー!豊久ぁーー!!」
「此所じゃ。親父(おやっど)。」
「おう、珍しく自室に居ったか。
ほれ!
お前(まあ)にやる!」
こうして私はその少年の前にどさりと投げ出された。
「何ぞ?
この女子は?」
少年は目をぱちくりさせて島津家久に問い掛ける。
うん、当然の疑問よね。
いきなり荒縄で上半身をぐるぐる巻きにされた女が目の前に放り出されれば、誰だって驚くに決まってる。
「新年の宴に潜り込んだ間者ぞ。
善くぞ島津家の宴に乗り込んで来おったわ。
肝の据わった天晴れな女子じゃ。」
そう言って島津家久は愉快さを隠さずからからと笑った。
「それを俺(おい)にくれるんか?」
「おう。
豊久も今年十五になるからの。
元服の祝いぞ。」
元服の祝いって……
何、人の事を品物みたいに扱ってるのよ。
「親父(おやっど)、有り難く頂戴致す。」
いや、君も何を真面目に頭下げてるの?
親父(おやっど)って事は、この少年が家久の子……島津豊久なんだ。
「その女子は豊久の好きにすれば良か。
但し、島津の名に泥を塗る様な事は許さんど。」
「承知した。」
「うむ、良かにせ(男子)じゃ!
では父は宴に戻る。
まだまだ飲み足りんわ。」
こうして島津家久は豪快に笑いながら、私を置いて出て行ってしまった。