第12章 密か【イケメン幕末】
どくんと鼓動が高鳴り、私は顔を上げ近藤殿を見つめる。
少し照れた様なその柔らかい眼差しに気付けば、もう抗う事など出来なかった。
「隼多というのは兄の名です。
私は………と申します。」
途端に近藤殿の表情がぱあっと明るくなる。
「そうか、と言うのか!
うんうん……美しい名だ。
その方がしっくり来るぞ。」
近藤殿の声で呼ばれた自分の名に何故か照れ臭くなりながら、私は漸く顔を綻ばせた。
「本当になあ………
こうして見れば可憐な女子にしか見えぬのに
俺は一体何を見ていたのだろう。」
そう呟いた近藤殿はずいと近寄り、その右手で私の頬をそっと撫でる。
ずっとお慕いしていた人に、そんな事をされて仕舞えばもう私はぴくりとも動けなかった。
固まったままの私に近藤殿は小さく失笑し、それから……
私にとって夢の様な言葉が紡がれ始める。
「実はな……俺も悩んでいたのだ。
ずっとお前の事がどうにも可愛くてな。
それが弟子に対しての想いならば問題無いのだが……
そうじゃ無いから困ったもんだ。
まさか自分に衆道の気があるなどと随分困惑したぞ。」
「近藤殿………」
近藤殿が私を……?
信じられない程の歓喜に、私の視界はじわりと滲んだ。