第12章 密か【イケメン幕末】
その後、どうやって家まで帰ったのか覚えていない。
刀傷を負った私を見て両親も兄も大騒ぎしたけれど、私は自分の愚かさ故の結果なので大事にはしないで欲しいと懇願した。
皆は合点の行かない顔をしていたが、それでも私の想いを優先させてくれた様だ。
それからは只々、悶々とした日々を送った。
沖田殿に告げた通り屯所に行く事も無く、毎日を自室に引き籠った状態で過ごしていたある日………
「様……あの……お客人がお見えなのですが。」
使用人が私に声を掛けて来た。
「お客様…?」
ああ、そう言えば今日は両親も兄も出掛けると言っていた気がする。
対応出来る者が私しか居ないのだな。
「はい。
此方の御嬢様にお会いしたいと………」
私に?
「………分かりました。」
一体誰だろうと思いながら向かった玄関に立っていたのは……
「近藤殿!」
少し緊張した様子の近藤殿は、出て来た私の姿を見てほっとしたようにはにかむ。
「やあ、隼多。
久方振りだな。」
私を『隼多』と呼ぶ近藤殿に、側に居た使用人が不審気な顔をする。
それに気付いた私は慌てて近藤殿を自室に引き入れ、使用人にも人払いをした。