第12章 密か【イケメン幕末】
「さっき捕縛した奴等への尋問を土方さんが始めてます。
近藤さんも行って下さい。
隼多さんの手当ては俺がちゃんとしておきますから。」
「ああ……そうか。
………では頼んだぞ、総司。」
「はい。
任せて下さい。」
にっこりと笑った沖田殿の御言葉に頷いた近藤殿は、私へ心配そうな視線を投げ掛けてからおずおずと部屋を出て行った。
「さあ、隼多さん。
傷を見せて下さい。
……俺になら大丈夫でしょう?」
「沖田……殿………」
優しく微笑む沖田殿を目にして、もう私は抗う事もせず素直に袖から腕を抜き出す。
「そんなにあっさり従われちゃうのも
男として一寸残念な気もしますけどね。」
くすっと笑った沖田殿はやんわりと私の右腕を取った。
「ああ、出血の割りには傷は深くありませんね。
塞がりさえすれば大丈夫ですよ。」
沖田殿の丁寧な手当てを受けている間も、私は無言で身動ぐ事は無かった。
「うん、これで良し。
暫くは痛むかもしれませんけどね。」
そう言ってゆっくりと上着を整えてくれる沖田殿に向かって、私は漸く声を絞り出す。
「………明日から屯所には参りません。」
「そうですね。
傷が塞がるまでは稽古を休んだ方が良いですよ。」
「そうでなく……
もう………二度と……」
そこまで言って唇を噛み締める私を見下ろした沖田殿は小さく息を吐いた。
「そうですか。
残念ですけど、貴女がそう決めたなら仕方ありませんね。」
「……御世話に………なりました。」
肌骨なくその場で頭を下げる私に、沖田殿は明るい声色で語り掛ける。
「これは俺の推測でしかありませんが……
貴女が女性であった事、
近藤さんにとっては悪い事実では無いと思うんですけどね。」