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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第12章 密か【イケメン幕末】


それでも、恐怖と怒りで無様に呼吸を荒げる私に向けられた近藤殿の視線はとても優しかった。

「さあ、手当てをさせてくれ。
 此所では録な治療も出来ないが止血だけでも……」

そう言った近藤殿の手が私の襟元に掛かった時……はっと我に返る。

「だっ…大丈夫です。
 近藤殿のお手を煩わす程ではありません。」

私が近藤殿の手から逃れようと身を捩ってみても、その力は弛まなかった。

「何を言っている、隼多。
 大事な利き腕じゃないか。
 きちんと手当てをしなければ駄目だ。」

「いえ……本当に……平気ですからっ……」

自分の襟元を庇い必死に抗ってみるけれど、近藤殿の懇篤故の強引さも全く退きはしない。

「恥じる事は無い。
 さあ、見せてみなさい。」

これ迄に無い有無を言わせぬ物言いに逃れられないと感じつつも、だからといって肌を晒け出す訳には……

そして一際強い力で襟元を拡げられそうになり

「………嫌っ!」

私が激しく身体を反らせた所為で遂に晒で巻いた胸が露になって仕舞った。


晒で押し潰してはいるが、その膨らみは誤魔化しようが無い。

当然それを目にした近藤殿も心底驚いた様子で目を見開いている。

どうしよう……近藤殿に知られて仕舞った。

私が女である事を知られて仕舞った。

身体を見られた羞恥よりも、近藤殿を謀っていた事の方が一層居た堪れない。

私は暴かれた胸元を両腕で隠し身を縮ませる。

「隼多……お前は………」

近藤殿もそれ以上言葉を紡げない。

お互いに身動き出来ず、固まった様になって居ると

「近藤さん、後は俺がやりますよ。」

穏やかな声でそう言った沖田殿が部屋へ入って来た。
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