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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第12章 密か【イケメン幕末】


初めて目の前で繰り広げられる斬り合いに私の足は固まった様に動かなかった。

だが、一対四とは余りに卑怯ではないか。

その怒りを以てして無理矢理気力を奮い立たせた私は手に持っていた木刀を構える。

「近藤殿!
 私も助太刀致します!」

「隼多は後に下がっていろ。」

「そんな訳には参りません。
 私も微力ながらお力にっ……!」

「止めないか、隼多!」

少し苛立ちを含んだ近藤殿の制止にも私は退かなかった。

二年も新撰組にて稽古を積んで来たのだ。

其れなりに戦える……その時の私はそう思っていた。

だが…………

「そんな上品な構えで何が出来る。
 柔な小僧は引っ込んで居やがれ!」

小馬鹿にした笑みを浮かべた一人の男に軽々と木刀を弾き飛ばされ、そのまま右腕を斬り付けられて仕舞った。

「………………っ!」

痛い……と思うより先に、斬り付けられた右腕にじりじりと焦げている様な感覚が走る。

何なのだ……これは。

これが本物の斬り合いなのか。

この状況の中では私が学んだ剣術など只のお遊びじゃないか。

何の役にも立たないではないか。

……………怖い。

怖い怖い…………身体が地中に埋まって行く様だ。

もう一歩も動けない私はぶるぶると震えながらその場で腰を抜かした。

「隼多、確りしろ!」

そう叫んだ近藤殿は無様に尻餅を突いた私の前へ躍り出て、尚も四人を相手に互角以上の奮闘を繰り広げる。

そんな状況を虚ろな視線で追っていると

「近藤さんっ。」

屯所の中から沖田殿と土方殿が勢い良く飛び出して来た。
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