第12章 密か【イケメン幕末】
沖田殿が一人になるのを見計らい、私は声を掛ける。
「沖田殿は……お気付きだったのですね。」
「ああ……勿論。
結構早い段階で気付きましたよ。」
沖田殿は何でも無い事の様に笑顔で答えた。
「他の皆も……?」
「うーん……どうでしょうねぇ。
齋藤さんと山崎は気付いているだろうなぁ。
土方さんはどうだろう。
あの人は殆ど稽古場に来ませんからね。
気付いて無いと思いますよ。」
「あの……近藤殿は……」
私が震える声でそう聞くと、沖田殿の表情が和やかに緩む。
「近藤さんには無理でしょう。
あの野暮天が気付く筈が無い。」
くすくすと笑う沖田殿に私は縋り付く様に懇願する。
「沖田殿、お願いです。
近藤殿には言わないで下さい。
後生ですから、近藤殿には。
……今は、まだ………」
俯いて肩を震わせる私へ沖田殿が近付く気配を感じる。
「言いませんよ。
貴女が女性だからって、
今の所何も問題は無いですからね。」
「沖田殿………」
「只……」
その声に顔を上げた途端、沖田殿の手が私の頬をするりと撫でた。
「…………っ!」
驚いて息を飲む私へ一層近付けた沖田殿の顔が艶やかに歪む。
「勿体無いなあ。
貴女はこんなに綺麗なのに……。」
そう言った沖田殿は「では、また明日」と、颯爽とその場を後にした。
身体が固まって動けないままの私を残して。