第12章 密か【イケメン幕末】
「有り難う御座いました。」
私は沖田殿に深々と頭を下げる。
近藤殿と屯所へ着いて直ぐ、私は稽古場に向かい沖田殿に手合わせして戴いた。
沖田殿は凄い。
同じ時間動いた筈なのに汗を滴らせ呼吸を荒げる私とは違い、息一つ乱していない。
どうすればこの人の様になれるのだろうか?
そんな事を考えながら稽古場の隅で一人汗を拭う私の傍らに沖田殿が近付いて来た。
その気配に気付き顔を上げた私の耳元で、沖田殿はそっと囁く。
「まだ僅かに匂いますよ。
気を付けて。」
ぐしゃりと心臓を鷲掴みにされた気がした。
沖田殿は私が女である事に気付いているんだ。
それだけを告げて去って行く沖田殿の背中を、私は身体を震わせて見つめた。