第9章 朧月【イケメン戦国】
「ふん……まさかが政宗の手に堕ちていたとはな。」
信長様の元にを連れて行くと、信長様は開口一番にそう言って不敵に笑う。
激昂して斬り付けられる事すら覚悟していた俺はその余裕ある姿に拍子抜けし、そしてこの主君に末恐ろしさを感じた。
「己の足許すら見えていなかったとは……
俺もまだまだの様だ。」
再びくくっ…と喉を鳴らし自嘲する信長様。
何故俺を責めない?
信長様の考えが全く図り知れねえ。
俺の隣ではが顔を俯かせたままじっと座り込んでいる。
そんなに信長様はねっとりとした視線を向け
「………。」
低く艶やかな声でその名を呼んだ。
びくりと身体を震わせたはそれでも顔を上げなかった。
「貴様は政宗と共に居たいと……そう言うのだな?」
「……………。」
否定も肯定もせず無言の。
そんなの態度が俺の中にじわじわと得体の知れない不安を拡げる。
その不安を察したのか、俺を煽る様に信長様の表情が愉悦に歪んだ。
「……一度しか言わぬぞ。
しかと聞いておけ。」
まるで俺の存在など目に入っていないかの如く、に語り掛けた信長様の台詞に俺は喉を鳴らす。
「俺には貴様しか見えん。
この世で只一人……貴様だけだ。」
………駄目だ。
直感的にそう思った。
信長様にこの先を言われて仕舞えば………
「……愛している。」
途端、俺の隣でが立ち上がる気配を感じた。
させるか…とを捕まえようと伸ばした俺の手を摺り抜けて………
の身体は信長様の胸に飛び込み、そしてその腕に絡め取られてしまった。
「信長様……私も……
私も愛しています。」
は嗚咽混じりながらはっきりとそう告げる。