第8章 横恋慕【イケメン幕末】
そこからは完全に宴になってしまった。
次々と近藤さんにお酌に来る隊士達は、私にも温かい言葉を掛けてくれた。
酔っ払って踊り出す人も居れば、「これで新選組は益々安泰だ」と泣き出す人まで居る始末。
でも私と近藤さんの事をこんなに喜んで貰えた事が本当に嬉しい。
この騒ぎは当分終わらないな……私はそう判断し、お酒の追加や肴の用意の為に広間と台所を何度も行き来する事になった。
「さん。」
台所でお燗の準備をしていると不意に名前を呼ばれた。
その声に振り向くと台所の入口から沖田さんがひょっこりと顔だけを覗かせて居る。
「沖田さん。」
沖田さんの穏やかな笑顔に私も顔を綻ばせた。
そして台所に入って来る沖田さん……の後には土方さんと斎藤さん、そして山崎さんまで続く。
「皆さん、どうされたんですか?」
驚いた私がそう問うと
「お礼が言いたくて皆で来ちゃいました。」
と、沖田さんが答えた。
「お礼?」
「はい。
さん、本当に俺の姉さんになってくれたんですね。
ありがとうございます。」
以前沖田さんに言われた言葉が甦り、じんと胸が熱くなる。
「そんな事……。
私の方こそこれからも宜しくお願いします。」
沖田さんと私で頭を下げ合っていると、横から土方さんの失笑が響いた。
「姉さん……?
まあ、確かに近藤さんの嫁なら俺達に取って
姉貴みたいなもんか。
……泣き虫で頼り無い姉貴だが。」
泣き顔を土方さんに見られた事…そしてその後の出来事を思い出し、私の顔は急に熱を持つ。
「あの……その節は本当にご迷惑を……」
「いや……
お前みたいに素直で真っ直ぐな女が
近藤さんの側に居てくれるのは有り難い。
こっちこそ宜しく頼む。」
口隠る私に土方さんは優しい口調で言ってくれた。