第8章 横恋慕【イケメン幕末】
「さんは……近藤さんの事をどう思っていますか?」
沖田さんからいきなりの質問に声が詰まってしまう。
「え……どう…って……」
何て答えれば良いのかな?
まさか『愛してる』とは言えないし……。
本意を計りかねて答えを躊躇していると、沖田さんは何時も通りの悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「俺には……いや、俺達には…かな。
近藤さんって身内と同じなんですよ。」
言いながらも沖田さんは野菜を刻み続ける。
「俺にとっては何よりも大切な兄の様な存在で、
俺は近藤さんの為ならどんな事でも出来ます。
人を斬る事だって厭いません。」
余りにもあっさりとした沖田さんの物言いに、私の手はぴたりと止まってしまった。
「物騒な事を言ってすみません。
でも、それは間違い無く俺の本音です。」
………うん、分かってる。
沖田さんだけじゃ無い。
きっと土方さんも、斎藤さんも、山崎さんも……
隊士全員がそう思ってるだろう。
近藤さんはそういう人だから……。
でも、どうして私にそんな話を?
私は何も言えないまま、沖田さんが奏でるとんとんと小気味良い包丁の音を聴いていた。
「それを踏まえてなんですが……さん。」
名前を呼ばれてふと顔を上げると、沖田さんは優しい目をして私を見下ろしている。
「俺はさんみたいな姉さんも欲しいんですよ。」