第8章 横恋慕【イケメン幕末】
暫くして私はまた新選組の屯所で食事の用意をしていた。
暑気に当てられて食欲の出ない隊士が増えて困ると、近藤さんが心配していたからだ。
私にはこんな事しか出来ないけれど、それでも近藤さんのお役に立てるのはやっぱり何よりも嬉しいな。
そんな事を思いながら作業をしていると
「さん。」
不意に背後から声を掛けられた。
「沖田さん、どうされました?」
振り向くと台所の入口ににこにこと微笑む沖田さんが居る。
「さんのお手伝いをしようと思って。」
沖田さんはそう言いながら私の隣に立った。
「この野菜を刻めば良いですか?」
「いえ、そんな……大丈夫ですよ。
沖田さんにお手伝い戴くなんて……」
私が遠慮しても沖田さんは何処吹く風で、包丁を手にすると器用に野菜を刻み始める。
「俺が手伝いたいだけだから気にしないで下さい。
それに……」
「それに?」
私が沖田さんの顔を見上げると、沖田さんも私を見下ろしてにっこりと笑った。
「さんと少し話がしたくて。」