第7章 Phantom pain~幻肢痛~【薄桜鬼】
お前を西国に連れ帰り、俺の元でずっと愛してやると決めた。
お前は俺の子を産み、安寧と平穏に包まれてこの先はずっと笑って暮らせば良かった。
これ迄の辛酸を舐め続けて来た日々を、俺が一切合切忘れさせてやると決めたのに……。
「っっーーーー!!」
愛おしくて堪らない女の名を力の限り叫んだ時、がらがらと建物が崩れ始める。
そして完全に崩れ落ちる瞬間に、紅蓮の炎に包まれ立ち尽くすの姿を俺は確かに見た。
そこでは…………笑っていた。
俺を真っ直ぐに見つめて、何時も通り可憐に微笑むの口が微かに動く。
声など聞こえる筈も無い。
それもほんの一瞬の事だ。
直ぐに崩れ落ちた建物の残骸と炎がの姿を掻き消した。
だが、は俺に向かって確かにこう言ったのだ。
「ありがとう。」
その後、俺と天霧は何事も無かった様に再び会津に足を向けた。
勿論その前に、との兄に無体を働いた奴等が居る集落へ立ち寄った事は言う迄も無い。
異質な物を排除しようとして、その異質な物に排除される。
道理が通っているだろう?
人間共、後悔なら……地獄ですれば良い。