第7章 Phantom pain~幻肢痛~【薄桜鬼】
「を……頼む。」
予想外の言葉に、俺は息を飲んだ。
「を……
のあんな顔は……初めて…見た。
あんたに抱えられた時の…の…顔……
あんたなら…を……
あんただから………頼む……」
そこまで言うと男の右手がごとりと崩れ落ちる。
目を見開いたまま、事切れた様だ。
屈み込んで男の瞼を下ろしてやる俺の背後から天霧が声を掛けて来た。
「風間……どうするのですか?」
「さて、どうしたものか。」
俺の中では疾うに結論は出ているが、今それを口にするべきか何故か戸惑う。
その時、俺と天霧は同時に背後を振り返った。
この臭い………
このきな臭い……
何かが燃える臭い……
「……しまった。」
そう呟いた瞬間、俺と天霧はまた同時に元来た道へ駆け出した。